経済部 ー「イラン経済セミナー」:駐日イラン大使のスピーチ

イランと日本の経済関係

1929年、イランと日本の外交関係が始まり、経済関係も大きく発展へと向かいました。日本が原油とイラン市場を必要としていること、他方、イランが日本との貿易、そして日本の工業製品や技術を必要としていることが、両国の経済関係の軸であり、それは今も続いています。両国の貿易は、1973年に原油の世界市場価格が上昇した後、飛躍的に発展し、1978年には両国の貿易総額は、70億ドルに達しました。1979年のイラン・イスラム革命成就後も、両国の経済関係は継続し、1983年には70億ドルを超え、2008年には200億ドル近くまで達しました。

  イラン・イラク戦争後、そして1990年代前半には、両国の技術・産業協力関係は、新たな環境で再開し、日系企業の参画のもと、そして時には日本政府や民間セクターによる投融資のもと、様々な案件が実施されました。主な案件は、発電所の建設、製油所や石油化学コンビナートの建設、鉱山、セメント工場、そして自動車生産(日産、マツダ、スズキ、いすゞ自動車)でした。

日本政府と民間セクターは今日まで、上記の各分野における案件実施へ向け、適切な条件での数十億ドルの投融資を、イランの国営・民間企業に対して行ってきました。その中でも、1993年の、日本国際協力銀行(JBIC)による、ダムと水力発電所建設のための400億円の融資、石油産業開発案件実施のための、NICOへの30億ドルの融資があげられます。

  アメリカ合衆国によるイラン・イスラム共和国に対する一方的経済制裁の強化により、2000年代初頭から、イランと日本の経済関係は、この外的要因の影響を受け始めました。度重なる制裁により、イランにおける日系企業の活動は縮小の方向へと向かいました。にも関わらず、日本政府と民間セクターは、イランとの貿易や経済協力の拡大へ向け、あらゆる機会を活用してきました。特に、イラン核合意(JCPOA)成立後の両国の経済関係の発展は顕著なものです。

 両国の経済分野の協定

イランと日本の投資協定(投資の相互促進及び相互保護に関するイラン・イスラム共和国と日本国との間の協定)は、20162月に署名が行われ、相互の投資のための環境整備がなされました。

 貿易

原油と液化天然ガスは、イランから日本への最も重要な輸出品であり、輸出額の95%近くを占めます。そのほか、ナッツ類、絨毯、鉱物、石油化学製品などが、イランから日本へ輸出されています。日本からイランへの輸出品としては、工業機器・機材、電子機器、自動車部品、通信機器、そして投資に関わる製品があげられます。日本の総輸入額にイランが占める割合は0.5%、日本の総輸出にイランが占める割合は0.1%です。

2012年以降は、イラン産原油の対日輸出量は日量平均182,000バレルであり、日本の総原油輸入量の約5%を占めており、イランは第6位の対日原油輸出国です。

 民間セクター間の協力関係

イランとの日本の民間企業は、何十年にもわたり継続的に貿易や経済協力を進めてきました。イラン商工・鉱山・農業会議所内の、イラン・日本合同商業委員会は、2018年に設立され、活動を開始しました。現在日系企業の20社以上が、イランに駐在員事務所等を構えています。これらの企業は、技術エンジニアリングや商社などであり、丸紅、豊田通商、住友商事、双日、千代田化工建設、日揮などの、商社や技術エンジニアリング分野の企業です。

 日本の政府系機関等との協力関係

国際協力機構(JICA)と日本貿易振興機構(ジェトロ)は、開発援助、インフラ案件、研修プログラムの実施等において、イランと幅広い協力を行なっています。さらには、中東協力センター(JCCME)もまた、エネルギー分野を始めとする、イランの様々な政府機関の幹部や専門家を対象とした研修プログラムを実施しています。上記の3つの機構はテヘランに事務所があり、過去数十年間にわたり、両国の関係発展に重要な役割を果たしてきました。

「イラン経済セミナー」:駐日イラン大使のスピーチ

201937日木曜日

於:イラン大使館

   

【イランの立地・重要性】

 イランの現在の人口は、約8100万人、イランは15の国と陸続きであるいは海を隔てて隣接しています。周辺諸国を合わせると、地域全体で約65000万人のマーケットがあり、経済協力・貿易のための非常に大きな可能性を秘めた地域と言えます。非常に大きなマーケットがこの地域には眠っているのです。イランの北部には、中央アジア、コーカサス地方、ロシア、南部にはペルシャ湾岸諸国と、西部はトルコとイラク、そして東部はアフガニスタンと接しています。

  なぜ、イランが、この一大マーケットの最も重要な中心であると言えるのでしょうか?

  イラン南部のオマーン海とペルシャ湾に面したイランの海岸線の長さは、約1400キロです。この海岸の港は、これまで開発投資が行われ、地域の諸外国との貿易に大きな役割を果たしてきました。

  イランと域内諸国の経済にとって特に重要な港の一つに、チャーバハール港があげられます。チャーバハール港は水深が深く、オマーン海とマクラーン海岸に面した、インド洋の河口に位置しています。2016年の春、イラン、アフガニスタン、インドの首脳間で、チャーバハール港開発に関する覚書が締結されました。チャーバハール港は、陸に囲まれた中央アジアの内陸国が公海へと、最も短いルートで、最も安価にアクセスすることができる港です。インドはこれまで、同行の開発に、2億ドル以上の投資を行ってきました。港湾開発の第一フェーズとして、インドとアフガニスタン間の貿易製品の輸出入が、チャーバハール港経由で行われました。今後中央アジア諸国は、インド洋へのアクセスの物流拠点として、同港を活用することでしょう。日本の安倍総理大臣も、2016年に東京でインドの首相と会談した際、チャーバハール港の重要性を強調しました。イラン大使館は今後、チャーバハール港の経済的ポテンシャルに関するセミナーを開催する予定です。

  65000万人の一大マーケットにおけるイラン経済的ポテンシャルの別の側面として、イラン国内のエネルギー資源があげられます。イランは原油と天然ガスを合わせた埋蔵量では、世界第一位です。イラン南部のアサルイエ地区とペルシャ湾のサウス・パールスガス田は、世界最大のガス田です。また、イランはOPECの主要加盟国として、中国、日本、韓国、インドなどに原油を輸出しています。エネルギー資源へのアクセスのよさと、近くに大きな製油所があることから、イランの石油化学製品は、コストの面で価格競争力があります。また、イランの技術的経済的インフラ整備に加え、税金の優遇措置をはじめとする政府のインセンティブ政策により、外国投資企業はイランのマーケットに注目しています。

  カスピ海に面したイラン北部の港もまた、イラン南部の港と同様、カスピ海沿岸諸国への物流、トランジット貨物の輸送に加え、トランジットと石油スワップのための必要な設備があります。ロシアへの輸出製品は、アンザリー港やアミールアーバード港から、ロシア、アゼルバイジャン、そして他のカスピ海沿岸諸国へと輸送することができます。

  イラン経済の別のポテンシャルとして、イラン、日本、そして第三諸国と三者間の協力の枠内で日本の企業が案件を実施する際、イランの企業の技術力を活用できることがあります。イランの民間セクターは、近隣諸国でのインフラ案件を実施する際、豊富な経験があり、また地域のことをよく知っていることが、三者間協力におけるイランの強みと言えます。

 【日・イラン経済関係】

ご列席の皆様

 イランと日本の政治・外交関係は、両国の相互尊重に基づくものであり、本年は外交関係樹立90周年の節目の年です。日本の経済界は、イランに対して深くて、正確な見方・アプローチを持っており、イラン社会の技術的社会的ポテンシャルと可能性を正しく理解・把握しています。特に、イラン核合意成立後、両国の関係は最盛期を迎えました。合意後日本政府は、両国の貿易・経済関係の再開へ向けて効果的な措置をとりました。具体的には、100億ドルの信用枠・ファイナンス・ファシリティーの設定、投資協定の署名・発効があげられます。両国の経済協力のための環境整備がなされ、昨年春には、イラン大使館にて、JETROとの共催で、自動車部品に関するセミナーが開催され、日本の各部品メーカーの関心を集めました。他の分野においても、協力推進のプロセスが加速化しました。

  JETROの統計によれば、2018年のイランと日本の貿易総額は、41630万ドルであり、このうち、イランからの輸出が34610万ドル、日本からイランへの輸出額が、7100万ドルでした。現在日本は、アメリカの一方的かつ違法の石油禁輸措置の適用除外となっており、イランから日本への原油の輸出は継続しており、日本の石油元売り各社は、イラン産原油の調達・買い付けを続けています。2018年の統計では、日本の総原油輸入に占めるイラン産原油の割合は、4.2パーセントでした。日量約112000バレルのイラン産原油を日本は輸入しました。

 【アメリカ離脱後の措置】

 アメリカのイラン核合意から離脱後の、アメリカによる単独行動主義的制裁を、我が国は認めておらず、制裁再開は、国連安保理決議第2231号をはじめとする国際的規約に違反するものと考えます。それゆえ、日本をはじめとするあらゆる国との通常の経済関係の拡大へ向けて、あらゆる努力をしています。2週間前には、日本の参議院議長の招待により、イランの国会議長が訪日し、貿易・経済協力促進への方策、現状打開の必要性が再び強調されました。

  欧州3カ国、ドイツ、フランス、イギリスは、イラン核合意の当事国として、数ヶ月の検討期間を経て、EUの各企業がアメリカの制裁適用とならず、イランとの貿易継続のため、INSTEX(貿易促進支援組織)という特別目的事業体を設立しました。近い将来、このメカニズムは、EU以外の各国も享受できるようになるでしょう。

【スタートアップ企業の活躍】

 現在、電子取引など、最先端の技術革新が進む新たな時代において、知識集約型企業やスタートアップ企業などが、急速に伸長しています。イランの大学・高等教育機関における高い教育水準に照らして、斬新なアイデアを提供するイランの若い世代は、研究成果をビジネスと結びつけ、活発に活動し、イラン経済において特別な地位を確立しています。スタートアップ企業は、最先端技術のビジネスに加え、エネルギー資源、環境保全、生命科学、ステムセル幹細胞などの分野でも、目覚ましい成果を収めています。今日のセミナーを通して、イラン経済のいくつかの分野の可能性やポテンシャルを知っていただければ嬉しく思います。

2020年1月20日