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セイエド・アッバス・アラグチ・イラン外務大臣の論文
「シリアは厳しい試練に直面している」 (レバノンの新聞「アル・アフバール」紙掲載)
シリアが現在直面する困難な状況から抜け出す道筋は、独立の旗を高く掲げ、シリア国民の誇りと尊厳を尊重し続けることにあります。国旗を守り、この国土に生きる子どもたちの結束と共存の精神を維持しながら、全ての国民が自由にこの国の未来を決定できる選挙を実現することが不可欠です。
 西アジアの現状とイスラム世界の憂慮  レバント地方やパレスチナを取り巻く状況を考えれば、イスラム世界がこの地域の将来に深い憂慮を抱いていることは疑いようがありません。この地は長きにわたりイスラム世界の政治的運命を決定づける役割を果たしてきましたが、第二次世界大戦以降、ヨーロッパにおけるユダヤ・キリスト教危機がもたらされた結果、数十年にわたって多くの損失と主権の軽視を余儀なくされました。  筆者が外交官としての職責を全うする中で、「パレスチナ問題」は常に議論の中心でした。ヨーロッパの同僚たちはしばしば「ドイツ国民はナチス政権によるユダヤ人への残虐行為を恥じ、責任を感じている」と述べます。この主張は正しいものであり、ヨーロッパの暗黒時代の傷跡が深く刻まれていることを物語っています。しかし、その一方で、パレスチナ人への弾圧を続けるイスラエル体制に対する責任は誰が負うべきなのでしょうか。  イスラエル体制は、パレスチナの土地を占領し、国際決議に違反し続け、周辺国の領土保全や国家主権を侵害し続けてきました。その行為は、制限、封鎖、空爆、そして人道支援の妨害に至るまで多岐にわたります。2024年10月14日の「アル・アクサー殉教者病院」での非道なホロコースト事件を挙げるだけでも、その犯罪の苛烈さは明白です。  抵抗の歴史と文化 この75年以上の間、「抵抗」はシオニスト体制の侵略に対する唯一の解決策でした。「抵抗」は父親と母親の思念の中で形成され、抵抗の子供たちの有能な腕の中でさまざまな形で発揮されてきました。この全期間を通して抵抗の形態は、時や能力、環境などの要件に基づいていましたが、それは親から子へと受け継がれ、詩人たちの言葉としても形作られました。シリアの詩人ニザール・カバニの三部作「瓦礫の子供たち」はその一例です。カバニはガザでの日々を実際には見ませんでしたが、心の中で注意深く描写しました。 「ガザの生徒たちよ/私たちに教えてください/あなたが知っていることを少しでも/私たちは忘れてしまったのですから/教えてください…」  詩人は、シーア派とスンニ派の連帯、シリア、イラク、レバノン、イランおよび西アジアの他の国民による共同戦線の結成のイメージ像を提示した人物であり、それは「ダーイッシュ(IS)」の侵略の間、イスラム世界における救いのモデルとなりました。  シリアの未来を見据えて  国旗の色を変えることで、その国の社会が期待するものや大義も変わると考えるなら、それはあまりにも稚拙な推測です。シリア国民は、1973年10月の戦争で抵抗の叙事詩を創り出した勇敢な国民です。かつて、マドリード会議の参加者にかつてのアラブ主義のバース党政権が参加していたにもかかわらず、パレスチナの大義を守るシリア国民の立場が、シリアが抵抗戦線から離脱するという敵の望みを絶望に転じさせた史実もあります。  シリアにおける今般の出来事は、その主権と領土保全を侵害し、国民国家の崩壊を招くような結果を許すべきではありません。むしろ、シリアにおける全ての民族の意見や思想傾向を尊重する貴重な機会と捉えるべきです。詩人アドニスの言葉を借りれば、「シリア国民は変化そのものを拒んでいるのではなく、その本質を損なう方法や行為を拒んでいる」のです。  今日、シリアは厳しい試練に直面しています。アルカイダやISなどのテロリストがもたらす脅威は、地域の懸念を強めており、テロリストがシリアを自分たちの安全な避難所に変える恐れがあります。イスラエルの侵略、そしてアメリカやその域内同盟国の軍事介入は、シリアに深刻な挑戦をもたらしています。これらの体制や国々は、隠蔽できない取り返しのつかない戦略的誤算を犯しました。侵略と介入の目的は、シリアの社会基盤や科学資本、経済インフラや防衛力の破壊です。シリアへの外国軍の侵攻によってもたらされた打撃にもかかわらず、この国の近隣には、何も持たず、しかし称賛に値する精神と信念を持って、ガザ北部のジャバリアの小さなキャンプで2か月間、シオニスト軍の地上攻撃と空中攻撃に勇敢かつ英雄的に抵抗したシリア人がいたことは明らかです。  最終的な道筋  シリアが現在直面する困難な状況から抜け出す道筋は、独立の旗を高く掲げ、シリア国民の誇りと尊厳を尊重し続けることにあります。国旗を守り、この国土に生きる子どもたちの結束と共存の精神を維持しながら、全ての国民が自由にこの国の未来を決定できる選挙を実現することが不可欠です。  国民の票を尊重することは、シリア国民の意思を体現し、社会のあらゆる階層が選ぶ政治体制の形成につながる自由で公正な選挙を通してこそ実現します。これは、国連安全保障理事会決議2254の枠組みにおける、イラン・イスラム共和国の外交政策の根幹と方向性を構成するものです。
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